White Rainbow

ある日、霧の中で幻のクマと1匹の野良猫が出会った。


魔法使いさんは、ある日、森を歩いているコロボックルに1冊のノートを手渡しました。


ノートには、「コロボックル日記」と書いてありました。


魔法使いさんは、言いました。

「その日の出来事を、どんな言葉でもいいから、書いておきなさい。」


魔法使いさんは、自分と会ったときにそのノートを見せてほしいと言いました。


コロボックルは、なんだかよくわからないまま、頷き、ノートを手に森を歩いていきました。


コロボックルの姿が見えなくなると、弟子が姿を現しました。

魔法使いさんは、微笑んでコロボックルと出会った日のことを話しました。


「彼は、戦っているんだよ。」


ずっと、ひとりで戦ってきたんだと話す魔法使いさんを、弟子はじっと、見つめていました。


「なぜ、ひとりで戦うの?」


みんなで戦えばいいのにと言いたそうな弟子の問いかけに、魔法使いさんは答えました。


「それは、彼自身の戦いだからだよ。私達は、いつだって手を貸せる。けどそれじゃ、彼は何もわからないままだ。」


自分で戦ってこそ、誰かに守られるということや傷つくということがどれほどの痛みなのか、理解できるんだ。


魔法使いさんの言葉を胸に、弟子は少しうつむいて、頷きました。


「今はよくわからなくてもいい。そのうち、君にもわかる日がくる。」


ふたりは、手を繋いで、森のどこかにある小屋へ帰っていきました。




一方、コロボックルは、またしても森を焼き、汚し、傷つけるアイツと出会い、戦っていました。


「なんでいつもいつも、お前達はそんなことばかりしてるんだ!」


コロボックルは、怒りをあらわにしました。


「イャヘッヒッヒ!」


奇妙な笑い声を響かせて飛び回るアイツに、コロボックルは怒り心頭でした。

腕を大きく振り上げたところで、コロボックルはハッとしました。

あの日の魔法使いさんの言葉が止めさせたのです。



腕をあげて固まるコロボックルを見て、同じように動きを止めるアイツ。


「...なんだ。もう暴力はふるわないのか。」


コロボックルは、歯を食いしばって、怒りをおしころしていました。


なぜ森を傷つけられると、こんなにも胸が痛いのか。
なぜ、こんなに憎くて仕方ないのか。
自分では処理できない気持ちでした。


「使わないなら、お前のその力、俺によこせ!」


アイツは、コロボックルの手に握られた棒を奪おうと飛びかかってきました。


コロボックルは、とっさに振り上げた手を下ろして、自分を守ろうとしました。

しかし、長い爪を防ぎきれず、コロボックルは傷を負いました。


アイツは、なんとかコロボックルが振り下ろした棒から出た光に目をやられたのか、叩き落とされたように、うずくまって動かなくなりました。


コロボックルは、初めて恐怖を感じました。

今までもやってきたことなのに、どうしてこんなに心が震えるんだろう?

寒さで体がかじかむようだ。


震えながら、ヨタヨタと近づいていくコロボックル。


「動くな!」


魔法使いさんが現れました。

ハッと顔を上げるコロボックル。

「それ以上動くんじゃない...。」

目の前に現れた魔法使いさんは、再度低い声で言いました。


魔法使いさんは、小さな瓶を取り出して、アイツに何かを語りかけているようでした。


アイツから一筋の涙がこぼれ落ちて、魔法使いさんの小瓶で掬うように入れられるのを、コロボックルは見ていました。


震えは止まっていました。


魔法使いさんは、コロボックルを見て言いました。


「私の言葉を思い出して、手を止めたのか。」


コロボックルは、黙っていました。
腕からは、血がしたたり落ちていました。


「戦うということは、痛みを伴う。今回は、その腕の傷が心の痛みを表している。」


コロボックルは、ボロボロと目から雫をこぼしていました。

片方の腕でゴシゴシとふいては、こぼれてくる雫に苛立ち、コロボックルは拭くのをやめました。


魔法使いさんは、その様子をみてゆっくり語りかけました。

「それが、痛さを伝える涙なんだよ。怖かったんだろう?誰かを傷つけるっていうことは、必ず、その後に悲しみがやってくるものだ。目から出る雫は、ナミダって言うんだよ。」


魔法使いさんの温かいそよ風のような声に、コロボックルはまた、一筋の温もりを感じて、ナミダは止まりました。


「...また、流れていった。消えちゃったけど。」

コロボックルは、その温もりを探しましたが、地に落ちて消えていくのを見つけただけでした。


魔法使いさんは、言いました。

「君は、知らなければならないことがたくさんある。もちろん、私もだ。共に歩いていこう。」


コロボックルは、その言葉が嬉しくて、胸に熱いものを感じられました。


魔法使いさんは、いつの間にかコロボックルの腕に包帯を巻いてくれていました。


「あれっ!治ってる!」


魔法使いさんは笑いながら答えました。

「治ってはいないよ。治りやすくなるオマジナイをかけたけどね。」


そう言うと、魔法使いさんは姿が見えなくなってしまいました。



コロボックルは、その日、ひとりで大樹の根に行き、教えてもらった魔法使いさんのオマジナイを唱えていました。


「痛いの痛いの飛んでいけ!」


大樹は、風に揺られて、枯れ木のような枝を振って応えているように見えました。



翌朝、陽の光に照らされたコロボックルは、再び森を散歩するように歩いていきました。


大樹は、コロボックルの小さな背中を、まるで見守るようにそこに佇んでいました。



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