White Rainbow

ある日、霧の中で幻のクマと1匹の野良猫が出会った。

幸せとクソの物語『夢幻の温もり』

魔法使いさんに聴こえる、かつての森の声は、時を経て、だいぶ小さくなりました。

徐々に体調が良くなっていき、それと同じくして、空も安定し森はいっそう輝きを増していきました。


コロボックルも、森が元気になっていく様子は目に見えてわかりました。


木々の緑は、より鮮やかになり、花も咲かせるようになっていました。


大樹を除いて。


コロボックルは、大樹のそばに行き、声を聴こうとしました。


一度だけ、大樹の声を聴いたことがありましたが、それ以来聴くことはできずにいました。

「あなたには生命の輝きがある。それはきっと支えとなり、私にはできないことができるでしょう。あなたにひとつだけ頼みがあります。」


それが、森を綺麗にすることでした。

コロボックルは、この森に生まれてその足で歩き始めた時から、森を綺麗にしてきました。


あの日、魔法使いさんに会って、変わったこと。

教えられたこと。

たくさんの日々を思い出して、魔法使いさんのクッキーを口にすると、再び花畑が目の前に広がっていきました。

コロボックルは、花畑の中を歩いていきました。


風に揺れる花畑。
知らない間に頬を伝っていく涙。

コロボックルは、あの日の出来事を思い出しました。


「涙は…生きている温もりそのもの。」

魔法使いさんが現れました。


「…魔法使いさん。」

コロボックルは、謝りたい気持ちでいっぱいになって、でも声にならないもどかしさに走り出しました。


以前と違って、どこまで走っても終わりのない花畑に、コロボックルは泣き止みました。

ふと、辺りを見回して、寂しくなりました。


「優しさは、いつしか無に返るもの。」

魔法使いさんが後ろに現れて、言いました。

コロボックルは、その言葉に続けて言いました。

「生半可な気持ちで、人の悲しみに触れてそこに倒れてしまっては、意味がない。」


花畑は風にさらわれるように、ふっと消えていきました。



魔法使いさんは、その様子を見て少しうつむき、柔らかく微笑みました。