White Rainbow

ある日、霧の中で幻のクマと1匹の野良猫が出会った。

『仇桜』リニューアル!

砂漠の果てにあるといわれる、小さな小さな村。
 
そこには、大きな木があるという。
 
 
この村に住む、ひとりの少年は嬉しそうに村の入口をめざして駆け抜けていく。
 
村人が注意をしても、たいして気にせず、ひたすらに入り口を目指していった。
 
すると、少し上から声が降ってきた。
 
 
「少年よ、なぜそんなに喜んでいる。」
 
 
少年は、さすがにマズいと気づいたようで、おそるおそるその声に振り返って答えることにした。
 
 
「大ババ様、だって今日は詩人さんが来る日じゃないですか!僕がこの日をどれだけ楽しみにしているか、知ってるでしょ!?」
 
 
砂漠の民は、滅多に外との交流がない。
それも、広大な砂漠に守られてのこと。
知恵も地図もなく、この広大な砂漠を渡りきるのは、魔物でも味方につけて、背中に乗せてもらうしかないだろう。
 
 
大ババ様は、ため息まじりに切り返す。
 
「だからといって、ひとりで騒ぐものではない。客人をしっかりもてなしなさい。」
 
 
大ババ様は、オオ・ババロアという名前だが、誰が呼び始めたのか、この村の長となった証か、若くして大ババ様になった。
その昔、大きなシシを従えて、雪山の主をやっていたというのは、きっとただの伝承だろう。
 
少年は、大ババ様からの激励に身震いした。
 
 
入口に、人影が現れた。
 
いつも、砂漠のどこかで道に迷って辿り着く詩人さん。
 
その迷い方も、辿り着く方法も、何も明かされていないのに、来る日だけは鳥が知らせてくれる。
 
外の世界では、伝書鳥っていうらしい。
 
 
「…疲れた。本当にここは遠いな。」
 
少年は、ふらふらになりながらも水分でノドを潤した詩人さんに、肩を貸した。
 
しばらく、村人に詩を語り、楽しい時を過ごしていたが、入口がまた騒がしくなってきたことに皆が気づいた。
 
 
「なんだ、この村は!勇者様御一行が来てるのに、誰ひとりもてなさねぇのか!」
 
勇者様御一行は、先の戦いで伝説となった人々のこと。
この村は、彼らが最後に訪れた村として、語り継がれていた。
 
「なんだ、全員ここにいたのか。」
 
 
薄汚れた鎧に、ボロボロに刃こぼれした剣。
どんな旅をしてきたのか、容易に想像できた。
 
 
詩人さんは、帰るよう促したが、突き飛ばされた挙句、高そうな装飾の角笛を腰から奪い取られてしまった。
 
「高そうな角笛を手に入れた!ピンポンパンポン」
 
下品な笑い声を響かせて、村を壊しながら立ち去っていく一行。
 
 
少年は、たまらず後を追いかけていく。
 
「待て!」
 
村人達も、何人か追いかけていく。
 
 
入口付近で、捕まっている少年と胸ぐらをつかまれる村人達。
 
「これだから、勇者様っていうのは止められねぇよなぁ!」
 
 
そう、勇者様には金品を差し出してきた。
 
しかし、それは共に戦ってほしいという皆の心からの願いであった。
皆の想いを聞き届けて、持っていってくれたのだ。
 
少年は、涙をこぼした。
 
「泣くなよ。もうとっくに、平和な世の中だぜ。」
 
また、下品な笑い声が響き渡った。
 
 
そこへ、ひとりの若者がやってきて、自らの冒険を語り始める。
 
「これは、冒険の書。長い長い旅の果てに辿りついたのは、一面砂の世界だった。これが、世界の終わりかと思うほどに、歩いても歩いても、何も見えない。どこをどう歩いたのか。小さな村に辿り着いた。その村には、大切な笛が祀られていた。その笛には魔法がかかっていた。綺麗な青い宝石がはめられた、その笛だ。」
 
ここまで話して、若者は勇者様の腰にぶら下げられた角笛を指さした。
 
「それを吹くと、外の世界までひとっ飛びだ。」
 
 
勇者様御一行は、顔を見あわせて、にやりと笑い、思いっきり吹いてみせた。
 
 
勇者様御一行の背後から、ザバーっと砂漠を切り裂くように現れたのは、砂漠に語り継がれる伝説の、黒い悪魔。
 
2本の角に、黒い体。
口からは黒い煙を吐き、眼光鋭く、斧のような尻尾を振り下ろしている。
 
勇者様御一行は、あっという間に砂漠の砂に消え去った。
 
 
砂漠に落ちた角笛を、若者が拾いあげて奏で始めると、黒い悪魔は再び砂の中に帰っていった。
 
 
「詩人さん、伝説の人に似てるね。」
 
 
少年は、ポロリと本音をこぼした。
 
 
この村に伝わる、角笛を奏でる者の物語。
それは、かつて世界を苦しめた災厄の使者を叩きのめした勇者のお話。
だが、本当にそれは使者に過ぎなかった。
災厄は訪れた。
先人達の築いたこの道を、のらりくらりと歩いてやってくる自称勇者の成れの果て。
そう、ただの成れの果て。
 
平和は、新たな災厄を生んだ。
 
 
「さっきのは、『追憶』だよ。君にいつかきかせようと思ってた話。僕は、確かにこの村に、冒険の最後に辿り着いた。でもそれは、言い方を変えれば、たまたま最後になっただけなんだ!その後、目的を倒しちゃったからね。」
 
角笛を腰にぶらさげて、若者は詩人に戻った。
 
 
数年後、少年は青年になり、ある歌を語り継ぐ。
 
───『仇桜』。
戦いの終わりに知ったのは、人々の夢。
武器を捨て、訪れるようになった地には花が咲くようになっていた。
それは、かつて奮った想いのように。
武器にまきつく、草木や花。
まるで、封印されるかのように佇んでいた。
冒険は、終わらない。
旅と、名を変えて続けることにした。
それが、戦い方を間違えた者の歩く道。
 
消えそうになる度に心の花はまた散ってく。
今もまだ癒えない傷はいつか空に。
立ち止まる僕の側で優しく光る灯が照らす。
ひらり落ちてく花びら。
 
 
砂漠には、枯れることのない花が大樹に咲く。
 
 
 
 
◇以前のブログに書いていたものを記憶から探って書き直しました!こっちの方がお気に入りかも(笑)
ほぼ同じなんですけど。
平和→仇桜として、儚いものとして描きました。
仇で調べて、出会った言葉でした。
最初は、仇討ちだったんですね。
そこから、RPG、モンハン…平和な世界の弊害を今の世の中に少しだけ重ねてみたんです。
意味を見つけて読んでくださる方には、壮大な冒険の書が見えるかもしれません(笑)
私には、追憶くらいしか見えません( ˙ᵕ˙ )
描けてよかったー!