White Rainbow

ある日、霧の中で幻のクマと1匹の野良猫が出会った。

幸せと糞の物語『カンタンな正義』


「アンタが悪いんでしょ?」

森にコダマするアイツの声は、木々を揺らした。


ざわめく森に、コロボックルは出動した。

森を走り回り、声がする方へ導かれていく。

すると、木々が焼けている地帯に辿り着いた。


「アタシ、嫌いなのよねー!アンタみたいにウチらいじめてくるやつー。」


コロボックルに向かって言っているようだが、コロボックルは、後ろを振り返っていた。


「アンタに言ってんだよ!!」


コロボックルは、怒鳴るアイツの口調に不思議なものを感じていた。

「メスがいたのか…?」


しかし、どう見ても見た目はアイツのままだった。


怒号でいっそう燃え盛る炎を何とかしなければと、コロボックルは魔法で噴水を出した。

噴水は、高く噴いて、辺り一帯に雨を降らせた。


少しずつ力を失うように、炎は弱くなっていった。


「せっかく燃やしたのに、何やってんのよ!」


尚もアイツは、叫ぶ。

コロボックルは、泣かそうと決意した。

「めんどくさい、メスタイプ。」


それを聞いて、アイツは激怒したようだった。

「それを言われるのが一番嫌いなんだよ!!」

アイツは、飛びかかってきた。

コロボックルは、小枝のようなものを取り出して、これを防御。

弾かれたアイツは、ゴロゴロと転がっていく。

しかし、今回はこんなものでは済まないだろう。

すぐに、アイツがムクリと起き上がる。


「みんなでアタシをバカにしやがって。」

アイツの本音が始まった。

「アタシだって、一生懸命やってんだよ!!」


コロボックルは、2度目の飛びかかりを普通に避けた。

アイツは、濡れた地面にドサッと倒れ込んだ。

物の見事に、顔を泥だらけにして、またも立ち上がる。


「アンタナンカヨリ、アタシの方がいいに決まってる!!」


ここで、アイツの薄汚い魔法が弾けた。

コロボックルは、とっさに魔法で盾を出していたが、盾は脆く、アイツの魔法を受けきって崩れ去った。


アイツは、自分が魔法を使ったことを理解していないようで、キョトンとしていた。


コロボックルは、小枝のようなものを振るって呪文を唱え始める。


───それは果てしない希望への道程 それは彼方からの呼び声 心に思う大事な言葉 雫となって流れてゆく その先に見える命の姿 闇を照らす光に願う 渦はすべてを返す魔法なり


アイツの足元に、黒い渦が現れる。

コロボックルは、幾度となく見てきたその光景をただ眺めていた。

「簡単に振りかざせる正義なんて、ないんだ。」

アイツは飲み込まれていった。

その時、流れた滴は宙に浮き、コロボックルは近づいてそれに触れようとしたところ、手に染み込んでいった感覚があっただけだった。

「物事を決める時、どちらか一方の話だけで、正解は決まらない。答えを導くために、僕は言葉を使う。」

コロボックルが決意を新たにしたところで、小さなつむじ風が起きた。

魔法使いさんが現れて、コロボックルにそっと声をかける。

「言葉は、魔法を生む。君の優しさは、アイツの涙になる。これからも、その心を大事に戦い抜きなさい。」

柔らかな微笑みと、温かい言葉。

つむじ風と共に聴こえた、応援しているよという声。


コロボックルは、少し目頭が熱くなった。

地面には、雫がひとつ落ちて、まだ乾ききらない大地に染み込んでいく。