White Rainbow

ある日、霧の中で幻のクマと1匹の野良猫が出会った。

幸せとクソの物語『やさしさ』

コロボックルは、空を見上げていた。

流れる雲に時々、考え事を乗せて運ばれていったらと考える。


ある日、森を歩いていて出会った猫は、自分のことを「ワガハイ」と言った。

そして、最後に「にゃ。」をつける。


コロボックルは、考え事に思いを巡らせ過ぎたのか、木の根に足をとられ、転んだ。

顔を上げると、猫の姿があった。

「ワガハイ、ずっとお前を見ていたにゃ。今日のお前は心ここにあらずにゃ。」

猫は、ついてくるように促す。


コロボックルは、猫に続いて、道なき道を歩いた。

しかし、なんだかだんだん離されていく。

コロボックルは、走り出していた。


やがて、幻の花畑へと辿り着いた。

いつも、どこをどうしたらつくのかわからない。


幻の花畑は、ぼんやりと光り、優しく揺れる。

コロボックルは、花に温もりを感じて、歩き出した。

少し、ひらけた地に寝っ転がって、その温もりを心でいっぱい感じた。


「お前は、優しさをまだ知らないにゃ。」


猫は、近くに現れた。

コロボックルは、そんなことないと否定した。

魔法使いさん、弟子、森の動物たち。

森の優しさも、空の優しさも、今の僕は知っていると伝えた。


猫は、鼻でため息をついた。

「そうじゃないにゃ。お前には、内なる優しさがまだないって言ってるにゃ。」


コロボックルは、黙った。

猫は続けた。
「お前が流すナミダ。それは、変わらずワガハイや森の動物たちにも流れていくものかにゃ。」


コロボックルは、下を向いた。

猫の声が、震えていて悲しみを伝えていたから。


「なぜ、それが流れていくのか。考えて流すにゃ。」


猫は、くるりと背を向けて、幻の花畑を歩いて行く。

その長い尻尾を目印に、左右に振りながら。


コロボックルは、見える限り、その目印をじっと見ていた。

見えなくなる頃、ふと声がきこえた。


───忘れるにゃ。お前はひとりではないということを。


コロボックルは、この日から猫を「おネコさま」と呼ぶことにした。


幻の花畑は、歩いて行くコロボックルの背中を応援するように、優しく揺れていた。