White Rainbow

ある日、霧の中で幻のクマと1匹の野良猫が出会った。

幸せとクソの物語『贈る涙』

コロボックルには、考え事が尽きない。

それは、アイツが笑っているから。


なぜ、森を傷つけるのかもわからない。

なぜ、それが楽しいのかもわからないまま。


ただ、笑っているから、ますますわからない。



「それ、本当に楽しいの?」


コロボックルは、アイツの背中に聞いた。

アイツは、キョトンとして答えた。


「楽しいんでしょ、これが。」


コロボックルは、怒りに震えていたがまだ堪えることにした。

「僕は、お前が楽しいのか知りたい。」


アイツは、今度は少し考えて、答えた。

「…ボクには楽しいというものは本当はわからない。」


ただ、痛みと恐怖に襲われた時、どうしようもなくなると語った。

コロボックルは、アイツの体が本当は爪痕だらけなことに気づいた。

「楽しいっていうのは、傷つけることでは決して生まれないものなんだ。」

コロボックルの言葉に、アイツは顔を上げた。

「じゃあ、どうやったらいいの!?」


アイツは、向かってきた。

コロボックルは、たえられなくなった。


アイツの足元に、黒い渦が湧く。

「それもわからないのに、この森を歩いていくのか。」

コロボックルは、泣いていた。

アイツは、最期にポツリと言った。

「…ごめん。」


コロボックルには、どうしようもない涙が流れ続ける。

声を上げた。

言葉にならない、悲しみをどうすることもできず、ただ誰かに助けてほしかった。

このどうしようもない悲しみを、消し去れない世界。


「君が、いつかその悲しみに再び泣く日がくることを私は待っていた。」


魔法使いさんは、コロボックルにハンカチを差し出した。

その後ろには、弟子の姿が見え隠れした。


「魔法使いさん、僕はもう戦いたくありません。」


コロボックルは、涙ながらに声を絞り出した。


魔法使いさんは、何も言わず、ただコロボックルを包み、慰めた。

「君が戦うことをやめると、森はどうなってしまうんだろう。誰かが君の代わりに戦うだろうか。もしそうなら、それは誰だと思う?」


コロボックルは、泣き止んで考えた。

「僕は、自分の代わりを見たことがないです。考えたこともありませんでした。」


魔法使いさんは、ゆっくり話しかけた。

「君が、この問いかけに私や弟子の名を出さないことがこの森の希望なんだ。それが、君の持つ優しさだ。」

コロボックルは、首をかしげて言った。

「僕は、誰かがやらなきゃいけないなら、僕がやるってずっと思っていました。」


魔法使いさんは、微笑んで言う。

「なら、君に限界はない。どこまでも、やれるだけのことをやりなさい。この森は、君が生きている証なのだから。」


見守り続けた弟子は言う。

「あなたは、アイツの悲しみを知って、泣いただけ。それが誰かを思うってこと。」


コロボックルは、ビックリした。

魔法使いさんは、嬉しそうに弟子の頭を撫でた。


「君は、ひとりじゃない。」

それを決して忘れてはいけないよ、と加えて、魔法使いさん達はつむじ風に姿を隠した。


コロボックルは、目をこすりながら、心に灯るような温もりを感じて、また森を歩き出した。


木々が、そんなコロボックルを見守るように枝を揺らしていた。