White Rainbow

ある日、霧の中で幻のクマと1匹の野良猫が出会った。

幸せとクソの物語『さよならの思い出』

コロボックルは、日記を書き続ける。

森の様子、空の色、アイツのこと。

自分のことも、たくさん書いてきた。


魔法使いさんは、いつもお返事を書いて、それをまた渡してくれる。


コロボックルは、毎日それを持って森を歩いていた。


この日、アイツを見たのは最後になった。


いつも寂しかったアイツの、最後の悪あがき。


見たことのない天秤を手に、アイツは現れた。


「イャヘッヒッヒ。不死鳥って知ってるか?これは、どんな願いも叶えてくれる、魔法の天秤さ!」


コロボックルは、そんなものあるはずがないと言った。


「願いは、自分の力で叶えるんだ。」


そんなものがあるなら、自分の願いが叶ってなきゃおかしいとさえ、今のコロボックルには簡単に言えた。


「イャヘッヒッヒー!これは俺が見つけたんだから、俺だけの願いを叶えるためにあるんだ!お前なんかいなくなっちゃえ!!」


コロボックルは、ため息をついた。

どれだけ心を見ようと、歩み寄ろうとしたところで、アイツは聞きゃしないんだ。

アイツは、コロボックルの手にあるノートに目がいった。


「…お前の大切なものを、この天秤にかけてやる。」


コロボックルはもう、そういうことにうんざりしていた。

白い手のひらに収まるくらいの光は、不死鳥の飾りがついた天秤へ乗せられた。

それは、森中から集められていく。

「イャヘッヒッヒー!」

コロボックルは、泣いていた。

そして、もう片方にこのノートを乗せるように、アイツに渡して、コロボックルは去った。


笑い声は、しばらくして聞こえなくなった。


コロボックルには、涙が流れ続ける。

拭っても拭っても、それは止まらない。

「僕は、アイツに何をしてあげられたんだろう…。」

小さな声で呟いた、心の内側から出てきた言葉。

コロボックルは、ただ悲しかった。



魔法使いさんが、目の前に現れた。

泣いているコロボックルを抱きしめて、小さなつむじ風を起こすと、あの歌声が響く、幻の花畑へ連れていった。


「さぁ、確かめてごらん。」

魔法使いさんは、言った。


コロボックルは、嬉しさ半分、怖さも半分。
歩き続けた。

歌声のする方へ。

足元に、あのイバラはなかった。

近づく姿は、あの日からの思い出を繋ぐ。



そこには、弟子が歌う姿があった。

幻の花畑に、たくさんの音符を踊らせて。

コロボックルは、嬉しさに一緒に歌いだした。

そして、話しかけた。

「君だったんだ!あの日聴いた君の歌声だった!」


弟子は、頷いた。

溢れる笑顔に、あの日の歌。

魔法使いさんは、微笑んで見届けていた。


昼の空に、星が煌めく。


それはまるで、みんなの最後の笑顔が空に描かれるような、涙を見せる空だった。